2025年 調査報道大賞・発表



調査報道大賞
2025

Investigative Journalism Award 2025

結果発表

「調査報道大賞」の第5回授賞作品を次の作品に決定しました。

キーボード

大賞

NHKスペシャル「冤罪の深層~警視庁公安部・内部音声の衝撃」(NHK)

(授賞理由)
 重大な冤罪を生んだ公安捜査に対し、継続取材を続け、新たな事実、中でも音声を入手したことは特筆に値する。これまで2回の番組の上に、さらに第3回目を成し遂げた価値は高い。

《NHKディレクター 石原大史様より》

 二年連続の大賞受賞に驚くと共に、大変名誉に感じております。
 この番組は、警視庁内部で録音された音声記録を軸に制作しました。音声記録は、これまで徐々に明らかになってきた“冤罪の深層”を決定的に裏付ける、動かぬ証拠となりました。
事件については、捜査の違法性などを認めた国賠訴訟の控訴審判決が確定。
警視庁が検証結果と関係者の処分を発表するなど、急速に幕引きが図られようとしています。
しかし、大川原化工機の関係者からは、検証が不十分だとの声もあがっています。私達は引き続き、事件の「深層」の解明に向け取材を続けて参ります。

『兵庫県における公益通報や知事選、誹謗中傷等をめぐる調査報道 (TBSテレビ『報道特集』)』

(授賞理由)
 困難が予想されるテーマを避けず、圧力に屈せず、取材を続けたことを高く評価する。デマがデマであることを明確にし、この時代に起きたことを記録した価値も大きい。

《『報道特集』キャスター・村瀬健介様より》

 『報道特集』が約一年にわたって取り組んできた兵庫県をめぐる一連の報道は、公益通報者への県知事の対応の問題から始まり、知事選を経て民主主義の在り方を問う問題にまで広がっていきました。その過程で番組には多くの毀誉褒貶が寄せられ、私たちスタッフは勇気づけられたり、傷ついたり、省みたりしながら伝え続けてきました。それだけに、このように栄えある賞をいただくことは大きな励みとなります。心より御礼申し上げます。

優秀賞

全国紙・NHK部門、地方紙・専門紙部門、映像部門、独立メディア・雑誌・フリーランス部門別に選考

連載ルポ「追跡 公安捜査」など、警察庁長官狙撃事件と大川原化工機事件を巡る一連の報道(毎日新聞)

企業版ふるさと納税の「寄付金還流」疑惑に関する一連の報道(河北新報)

長野県石油商業組合「ガソリン価格カルテル疑惑」を巡る一連のスクープ(信濃毎日新聞社)

QAB報道特別番組「誰のために島を守る〜自衛隊配備 その先に〜 」(琉球朝日放送)

奨励賞

全国紙・NHK部門、地方紙・専門紙部門、映像部門、独立メディア・雑誌・フリーランス部門別に選考

教員性犯罪公判 横浜市教委による傍聴阻止を明らかにした一連の報道 (共同通信・東京新聞)

ホームレスは、どこへ行った―岐阜の現場から―(岐阜新聞)

屋久島町政をめぐる一連の調査報道/町長交際費問題、補助金不正請求事件など(屋久島ポスト)

選考について

授賞作は、期間中に応募・他薦された100件の作品の中から、報道実務家フォーラムに2017年以後参加した報道実務家による投票と、選考委員会による厳正な審査を経て選ばれました。

【選考委員】

  • 有働由美子
     

    フリーアナウンサー有働由美子

  • 江川紹子
     

    ジャーナリスト江川紹子=委員長

  • 塩田武士© 森清

    作家塩田武士

  • 西田亮介
     

    日本大学危機管理学部教授
    東京工業大学特任教授
    西田亮介

  • 三木由希子
     

    情報公開クリアリングハウス理事長
    報道実務家フォーラム理事
    三木由希子

選考委員からのコメント

江川紹子(えがわ・しょうこ)・選考委員長コメント

 今年も素晴らしい作品が集まり、選考委員会の議論も実に充実したものになりました。  その結果、今年は大賞が2つ。冤罪・大川原化工機事件を深掘りしたNHKのドキュメンタリーは、昨年に続いての授賞となりました。音声記録を入手しての今回の報道は、圧倒的な説得力をもって、冤罪の構図を描き出していました。
 情報提供者が、データ提供という自分に不利益がもたらされるかもしれない行為に踏み切ったのは、揺るぎない正義感と、誠実な取材を重ねてきた取材者に対する深い信頼があったからでしょう。優れた調査報道は、ジャーナリズムを信頼する人たちとの協力関係のうえに成立することを、この作品は改めて教えてくれています。
 この一年は、選挙報道のあり方が問われる一年でもありました。中でも兵庫県知事選は、「形式的公平性」にとらわれた従来型の報道に人々がそっぽを向き、SNSですさまじい量の虚偽情報・誹謗中傷が飛び交い、人の命が失われる事態にまでなりました。メディアに対しても、報道批判に留まらず、記者たちへの誹謗中傷や報道機関への攻撃もありました。
 そんな中、TBS報道特集の一連の報道は、選挙戦の裏で何が起きているのかを伝え、さらに自ら従来型報道からの脱却を試みました。その勇気と使命感を称えたいと思います。
 優秀賞4作品、奨励賞3作品もいずれも力作でした。とりわけ、地方での発信が光りました。大手メディアが地方記者を削減する中、それぞれの地域に根を張って、人々の生活や人権、地方自治のあり方にまつわる問題を掘り起こしているジャーナリストたちの仕事が、とても頼もしく感じます。
 そして、昨今の厳しい状況でも、事実に迫ろうと努力を重ねている各地のジャーナリストたちに、心からの敬意と声援を送ります。

澤康臣(さわ・やすおみ)・調査報道大賞実行委員長コメント

 受賞作が明らかにした事実の大きさ、重さに考え込みます。もし報道されていなかったら、これらの事実を私たちは知る機会はなく、「なかったこと」になっていたでしょう。市民が頼る捜査機関内部で、功名心から善良な企業人を犯罪者にしようとした者たちの会話も、事実でない情報と知りながらネットに拡散して敵意を煽り、民意をゆがめる者の実像も、気付くことなく過ごしていたはずです。情報過多の時代にあって、当事者の宣伝ではなく、独立した第三者が市民の利益のため伝える報道のかけがえなさを、改めて考えます。私たちは報道の質を向上させるため、こうした良い報道を讃えることが大切だと信じます。それにより、さらに良い仕事が後に続き、増えていくはずです。記事や番組へのメッセージが送りやすくなった今、応援や評価は市民誰もができる、さりげなく熱い報道テコ入れ策なのかもしれません。この賞がそんな熱につながっていくこともまた、私は願っています。

授賞式の開催について

10月7日(火)18:00~19:30
場所 スマートニュース本社(東京:渋谷)

※授賞式の様子はオンライン配信を行います。

調査報道大賞は、すぐれた調査報道を顕彰し、その社会的意義を広めるとともに、現場で取り組む取材者を励ますために設立されました。

  • 主催:特定非営利活動法人報道実務家フォーラム、スローニュース株式会社
  • 詳細:調査報道大賞ウェブサイト https://www.j-forum.org/award2025/
  • 対象:ジャーナリストの調査で分かったことを報道する調査報道であって、次のいずれかにあてはまるもの。
    • 2022年4月1日以後に発表された
    • 2022年4月1日以後に成果が顕著になった(10年前の報道の意義が、2022年4月以後の行政や司法の動きであらためて明らかになったなど。例として、1988年に毎日新聞が報じた薬害エイズ問題が、1996年以後の当局の動きで注目され、再評価されたというようなケース)