調査報道大賞(発表)

 
 
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調査報道大賞

Investigative Journalism Award

結果発表

「調査報道大賞」の第1回授賞作品を、

次の4作品に決定しました。

 
 
 
 
 
 

大賞

(すべての作品から1作品)

医学部不正入試問題を巡る報道(読売新聞)

(授賞理由)

入試の女性受験者らの点数を操作し不利益に扱っているという隠された問題を記者の取材とデータ検証で明らかにした。この報道を起点に問題が大きく展開し、大学入学者選抜実施要項の見直しにつながるなど、社会を変える良い結果を生んだ。訴訟をはじめ当事者がアクションを起こすきっかけともなり、ジェンダー問題を議論する今の世論にもインパクトを与えている。

 

優秀賞

(文字部門、映像部門をそれぞれ選考)

 
 
 
 

文字部門:菅首相長男違法接待問題を巡る報道(週刊文春)

(授賞理由)

報道がなければ知ることができない接待や癒着疑惑に光を当て、民主主義の正統性を問う議論を起こした。接待の細部を具体的に書き、写真も優れ、力ある者に挑む作法を熟知している。人々の、真実を知る欲求に率直に応えて突っ込むジャーナリズムが、強い者に立ち向かい民主主義の守り手となることを示した。

文字部門:関西電力金品受領問題を巡る報道(共同通信)

(授賞理由)

原発の取材は非常に難しく、口を開く人が少ない中で頭が下がるほどに忍耐強い取材をし、裏付けをとっていった姿勢に感服する。「そういうことがあるのでは」とも思われつつ証明できてこなかったことに記者が挑んだ取材で、不正な金の流れがあったことを明確にし、当事者がそれを認めて謝罪するという結果につながった。

映像部門:NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」(NHK)

(授賞理由)

見た後、頭から離れないほどの強さがある。最期のとき、妹の電話、メール送信など節目を全て映像で記録しており、取材者が、取材対象の信頼を得ていく情熱が伝わる一方、取材の苦悩や迷いもまた感じられる。考える材料を提供するジャーナリズムの存在意義に沿い、デリケートな問題を考えさせる作品。安楽死でない選択肢についても丁寧に触れている。

 
 
 
 

受賞作取材担当者のコメント

 

【読売新聞 ロサンゼルス支局長(元社会部次長)渡辺晋(わたなべ・しん)さん】

 文部科学省を巡る汚職事件で、東京医科大の裏口入学の実態を追っていた私たちは2018年夏、ある取材先から驚きの証言を得ました。医学部入試における女子・浪人差別――。そのうわさはあっても、表に出たことは一度もありませんでした。私たちの報道をきっかけに、性別や経歴による格差の存在は他大学でも次々と明るみに出ました。その後、各大学で男女の合格率の差はほぼなくなりましたが、今も多くの元受験生らが訴訟で大学側と争っています。女性を敬遠する風潮は医学界に限りません。今回の受賞が、差別の不条理を改めて社会に問うきっかけになってほしいと願います。

【週刊文春 編集長 加藤晃彦(かとう・あきひこ)さん】
本記事は、断片的な情報を端緒に、長期かつ泥臭い取材で証拠を集めて掲載にいたりました。記者たちの努力に評価を頂き、うれしく思います。受賞を聞いた直後に、立花隆さんの訃報に接しました。「田中角栄研究」など雑誌ジャーナリズムを切り開いてこられた立花さんは小誌のOBでもあります。偉大な先輩を追いかけて、今後も権力者に忖度することなく、ファクトで迫っていきます。

【共同通信 札幌支社編集部次長(元社会部記者)長谷川智一(はせがわ・ともかず)さん】

 調査報道大賞・優秀賞(文字部門)」を頂戴し誠に光栄に思います。原発に絡む不正なカネの流れに興味を持ったのは、十数年前に電力会社元社長の側近を務めていたブローカーと知り合ったことでした。取材する中で、地域独占の電力会社や政治家、ゼネコンが消費者である私たちにしわ寄せする形でうまい汁を吸っているとの疑念を持ちましたが、報じるだけの確証を得るに至らず、いつか明らかにしたいとの思いを持っていました。複数の取材先から身の回りに注意するよう警告され、胃の痛い日々でしたが、関電の不正を読者に提示できたことに非常に大きな喜びを感じています。

【NHK 報道局社会番組部 統括プロデューサー 高倉基也(たかくら・もとなり)さん】

 安楽死を選んだ難病の女性と、同じ状況にありながら家族と共に生きる選択をした女性。2人の壮絶な選択に直面する中で、私たちは番組の答えが見いだせず、ただ佇むことを繰り返しました。原動力になったのが、「死のあり方をタブー視することなく議論できる社会になって欲しい」という、安楽死を選んだ女性の言葉でした。目の前にある現実から目をそらさず、ひとが最後に何を拠り所とするのかを見届けよう、その一心でもがき続けたこの記録に、調査報道としての高い評価を頂けたことは大きな喜びです。

【選考について】

 
 
 
 

【選考委員】

 

ジャーナリスト

江川紹子

​(委員長)

©森清

作家

塩田武士

三木さん写真1.jpg

ジャーナリスト

長野智子

東京工業大准教授

西田亮介

情報公開クリアリングハウス理事長報道実務家フォーラム理事

三木由希子

授賞作は、期間中に応募・他薦された89作品の中から、報道実務家フォーラムに2017年以後参加した報道実務家による投票と、選考委員会による厳正な審査を経て選ばれました。

【江川紹子・選考委員長コメント】

 ジャーナリズムの真髄は調査報道にあり、と言っても過言ではありません。隠された事実、人々が気がつかなかった問題や目を背けていた事柄に光を当てる、優れた調査報道は、世の中を少しよくしたり、私たちに様々なことを考えさせてくれたりします。

 今回は、そんな素晴らしい候補作の中から、選りすぐりの作品を、大賞、優秀賞に選ぶことができました。

 この賞が、今も地道な調査報道に取り組むジャーナリストの励ましになるよう願っています。

【澤康臣・調査報道大賞実行委員長コメント】

 89の多彩な候補作を見たとき、鳥肌が立ちました。すばらしい報道がこんなにもあると全部並べたかったのですが、選ばなければなりません。新聞、雑誌、放送、ネットメディア、全国メディアも地方メディアもありました。スクープ、ドキュメンタリー、検証が「異種格闘技戦」のように競い、難しくも関心の尽きない選考でした。ネットメディアは今後力を伸ばし、存在を増すと思われます。また地方メディアなど規模が小さい媒体の奮闘にどう注目するかも課題と感じます。調査報道大賞は今後もやり方を整え、みんなでジャーナリズムを支える場になっていきます。

 
 
 
 

【授賞式の開催について】

 日時:9月13日(月) 午後6時

 場所:オンラインのみで開催
ウェビナーURL:
 https://us02web.zoom.us/j/83085743591?pwd=N3JONmlPRm5tcE5taVhCK1lHcndRQT09
パスコード:126771
 *当日は運営責任者となる司会の指示(ミュートにしてください、など)をご了承いただける方のみ参加いただけます。進行にご協力頂けない場合、退出いただくことがございます。

【当日のスケジュール(予定)】
・開会のあいさつ(午後6時~6時10分)
瀬川至朗・報道実務家フォーラム理事長(ビデオメッセージ)
瀬尾傑・スローニュース代表取締役

・賞の授与と選考委員講評(午後6時10分~6時25分)
優秀賞 映像部門 塩田武士さんコメント
優秀賞 文字部門 長野智子さんコメント
優秀賞 文字部門 西田亮介さんコメント
大賞  江川紹子さんコメント

・受賞者のコメント(午後6時25分~6時35分)
大賞▽優秀賞 文字部門▽優秀賞 文字部門▽優秀賞 映像部門

・三木由希子さん(選考委員・報道実務家フォーラム理事)コメント
・閉会の辞(~午後6時45分)

 
 
 
 

【調査報道大賞の概要】

調査報道大賞は、すぐれた調査報道を顕彰し、その社会的意義を広めるとともに、現場で取り組む取材者を励ますために設立されました。

・主催:特定非営利活動法人報道実務家フォーラム、スローニュース株式会社

・詳細:調査報道大賞ウェブサイト https://www.j-forum.org/award

・対象:

ジャーナリストの調査で分かったことを報道する調査報道であって、次のいずれかにあてはまるもの。

・2018年4月1日以後に発表された

・2018年4月1日以後に成果が顕著になった(10年前の報道の意義が、2018年4月以後の行政や司法の動きであらためて明らかになったなど。例として、1988年に毎日新聞が報じた薬害エイズ問題が、1996年以後の当局の動きで注目され、再評価されたというようなケース)

【報道実務家フォーラム概要】

団体名:特定非営利活動法人報道実務家フォーラム

事業内容:記者、編集者、ディレクターなど報道実務家が取材技法について学び、会社や媒体の枠を越えてつながるとともに、報道の自由と記者の権利について理解を深める場を提供

理事長:瀬川至朗

事務局長:澤康臣

URL:https://www.j-forum.org

Design by Iwaki Maki

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