2026年 調査報道大賞・発表
調査報道大賞
2026
Investigative Journalism Award 2026
「調査報道大賞」の第6回授賞作品を次の作品に決定しました。

大賞
ETV特集「フェイクとリアル 川口 クルド人 真相」(NHK)
(授賞理由)
SNSにはびこるヘイトにひるむことなく丁寧な取材を重ね、真相を伝えた姿勢を高く評価する。ネット社会が抱える問題の深刻さを浮き彫りにした、素晴らしいドキュメンタリーだ。
《ETV特集「フェイクとリアル」取材班より》
この度は大変励みになる賞を頂き、心より感謝申し上げます。
番組は膨れ上がるSNS投稿の背景と、その影響を取材したものです。
ネット上にあふれる情報には人々の切実な思いや不安が映し出され、ファクトとフェイクが複雑に入り混じっています。端的で分かりやすい言葉が勢いよく広がり、歴史的経緯や複雑な事情は置き去りにされがちです。
この受賞を糧に、情報を発信する重みと、それが社会に与える影響を胸に刻み、物事の裏にある現実の複雑さと、改めて真摯に向き合っていきたいと考えております。
優秀賞
全国紙・NHK部門、地方紙・専門紙部門、映像部門、独立メディア・雑誌・フリーランス部門別に選考
いわき信用組合による不正融資に関する一連の報道(朝日新聞)
SNS選挙シリーズ連載「あの熱狂の中で」(神戸新聞)
「虹波」旧陸軍のハンセン病療養所での人体実験に関する一連の報道(京都新聞・熊本日日新聞)
令状も示さず警察官が個人宅のカギを破壊して97歳の高齢者を「連れ去り」!警察権力の暴走で女性は行方不明に(フロントラインプレス・SlowNews)
奨励賞
全国紙・NHK部門、地方紙・専門紙部門、映像部門、独立メディア・雑誌・フリーランス部門別に選考
フェンタニル密輸問題をめぐる一連のスクープと調査報道(日本経済新聞)
トクリュウ「ナチュラル」の闇アプリと捜査逃れの実態(フジテレビ)
選考について
受賞作は、期間中に応募・他薦された109件の作品の中から、報道実務家フォーラムに2017年以後参加した報道実務家による投票と、選考委員会による厳正な審査を経て選ばれました。
【選考委員】
-

フリーアナウンサー有働由美子
-

ジャーナリスト江川紹子
-
© 森清作家塩田武士
-

日本大学危機管理学部教授西田亮介
-

JX通信社代表取締役米重克洋
授賞式の開催について
11月22日(日)16:50~
場所 早稲田大学 国際会議場井深大記念ホール
※「報道実務家フォーラム2026」内で開催します
調査報道大賞は、すぐれた調査報道を顕彰し、その社会的意義を広めるとともに、現場で取り組む取材者を励ますために設立されました。
- 主催:特定非営利活動法人報道実務家フォーラム、スローニュース株式会社
- 詳細:調査報道大賞ウェブサイト https://www.j-forum.org/award2026/
- 対象:ジャーナリストの調査で分かったことを報道する調査報道であって、次のいずれかにあてはまるもの。
- 2023年4月1日以後に発表された
- 2023年4月1日以後に成果が顕著になった(10年前の報道の意義が、2022年4月以後の行政や司法の動きであらためて明らかになったなど。例として、1988年に毎日新聞が報じた薬害エイズ問題が、1996年以後の当局の動きで注目され、再評価されたというようなケース)
選考委員からのコメント
江川紹子(えがわ・しょうこ)・選考委員長コメント
排外的言説やヘイトスピーチ、誹謗中傷や真偽不明の情報がSNSとリアルの双方で飛び交い、増幅し、人を傷つけ、選挙などに悪影響を及ぼし、人々の分断を加速する。そんな状況があちこちで見られる昨今、大賞となったNHKの作品は、その典型とも言える川口市のクルド人への非難を取り上げたものです。
SNSを分析し、一つひとつの事柄について関係する1人ひとりの人を探し出し、事実を確かめる。この地道な作業を繰り返し、取材のプロセスをも明らかにしながら、今という時代のありようを映し出していきます。取材者が敵視・攻撃されがちなテーマでも、臆したり激したりせず、冷静かつ丁寧に事実を確かめていく取材姿勢には、心から敬意を表します。
また、優秀賞4作、奨励賞2作は、いずれも「こんなことがあったのか?!」と驚くべき事実を掘り起こし、その詳細を知らせてくれています。今年は、地方メディア部門に佳作が多かったのが特徴でもありました。ハンセン病療養所を巡る人権問題を長く取材してきた熊本日日新聞と旧日本軍731部隊の報道を重ねてきた京都新聞が協同して、戦時中の人体実験の実態を明らかにする、秀逸な企画もありました。
候補作の受付締め切り後も、各地では優れた調査報道が展開されています。7月の大地震に見舞われた熊本では、災害取材に追われ、新聞用紙を生産する製紙工場の被災で減ページを余儀なくされる困難な状況の中、熊本日日新聞の取材班は陸上自衛隊情報部隊による市民の情報収集活動についての独自の取材・報道を続けています。審査員一同、心から賞賛と激励の拍手を送ります。
埋もれていた事実に光が当たることで、社会はよりよくなるはず。そう信じて、取材を重ねている全ての現場の記者たちを、私たちはこれからも応援していきます。
澤康臣(さわ・やすおみ)・調査報道大賞実行委員長コメント
国際問題となっている薬物不正取引の舞台が日本にもあることをデータを駆使して明かした調査、地域の身近な金融機関が反社会的組織につけ込まれて不正の沼に落ちた実態の綿密な調査、そしてSNSにあふれるクルド人移民・難民への憎悪と現実の人々や社会との乖離と影響をつぶさに描きだした映像――今年の調査報道大賞も、非常に幅広い視座の作品から成り立っています。座標軸は多岐にわたり、価値観は幅が広く、それぞれのやり方で、主権者である市民に、それがなければ知ることのなかった重要な情報を与えてくれています。「ジャーナリズムの最大の目的は、市民が自由になり自治ができるよう、必要な情報を提供すること」という米ジャーナリズム書の言葉の、最も先鋭的な在り方が調査報道です。手間も費用も掛かり、実らぬ確率も高いこの仕事に、市民のため取り組むジャーナリストたちの誠実さ。民主主義に不可欠な調査報道を、この賞を通じ、皆さまとともに市民として応援できることを誇りに思っております。