インタビュー技術の考え方

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編集:​The GIJN Collection
翻訳:エァクレーレン

この記事はthe Global Investigative Journalism Network (GIJN)によって公開されました。日本語訳はGIJNのご支援のもと報道実務家フォーラムが公開したものです。貴重な情報を提供してくださり心より感謝申し上げます。

This story was originally published by the Global Investigative Journalism Network.
J-Forum publish the Japanese translation with GIJN’s support. 
We’re grateful to GIJN for offering and allowing to translate it into Japanese. 

 「インタビュー」というテーマに関するアドバイスといっても、その趣旨はさまざまだ。調査報道ジャーナリスト向きのものもあれば、警察官や企業経営者、弁護士、ソーシャルワーカー、あるいはそれ以外の立場を対象とするものもある。はっきりしているのは、インタビューは調査を行う者にとってもっとも信頼でき効果があるツールの一つということだ。

 GIJNでまとめたアドバイスの例は主としてジャーナリストによるものだが、他の立場からの声も少数だが取り入れている。

 役に立つ資料は豊富にある。その中でよく使われるのが「技法」という言葉だが、「準備」「聞くこと」という言葉も多く見られる。それだけではない。4つのヒントが含まれるリストもあれば、20、30、40も挙げているものもある。


ジャーナリストからのアドバイス

 公共ラジオ放送のジャーナリストとして先駆者的存在であるマリア・エミリア・マーティンは、「Reporter’s Guide to the Millennium Development Goals: Covering Development Commitments for 2015 and Beyond(記者のためのMDGs=ミレニアム開発目標ガイド:2015年以降の開発コミットメントを取材する)」のなかで、インタビューに関する章を執筆している。このガイドはGIJNの特集の中でも長期にわたってよく読まれている。

 マルチメディア・ジャーナリズムのマリー・ノーダシャーは、ZOOMによるインタビューを実施する際のヒントを提供している。

 複雑な内容に踏み込むためには、どのような会話テクニックやインタビューの質問が必要か、ソリューション・ジャーナリズムによる2019年の記事が説明している。この記事は、著述家・記者であるアマンダ・リプリーによる論文を手掛りとしている。ここでリプリーは、仲裁人や弁護士、[ユダヤ教の]ラビなど「有害な風説を阻止し、人々により深い真実を悟らせる方法を知る人々」からジャーナリストは何を学べるかを論じている。

 GIJC19で講演を行ったCBSの報道担当プロデューサーであるオリアナ・ジルは、「テレビ調査番組のためのインタビューのヒント(Top Tips on Investigative Television Interviews)」を公開している。

 バズフィード・ニュースの調査・プロジェクトエディターであるマーク・シューフズは、2017年11月にヨハネスブルクで行われたGIJC17において、「インタビューの技法(The Art of Interviewing)」と題する講演を行った。

 「Investigative Interviewing(調査報道におけるインタビュー)」は、『Modern Investigative Journalism(現代調査報道ジャーナリズム)』(マーク・リー・ハンター、ルーク・センジャーズ、マーカス・リンデマン)の第11章に収録されている。

 コンラッド・アデナウアー財団のグローバル・メディア・プログラムによる2010年のプロジェクト「The Investigative Journalism Manual(調査報道ジャーナリズム・マニュアル)」(訳注:リンク切れ)の第7章に、「Asking the Right(!) Questions(正しい(!)質問をするには)」が収録されている。

 「a guide to mastering the investigative interview(調査報道インタビュー習得の指針)」(訳注:リンク切れ)の冒頭には、「ルールを覚え、ルールを破る」とある。このガイドは、CBCの番組「The Fifth Estate(第五階級)」のプロデューサーであるジュリアン・シャーへのインタビューに基づいており、米調査報道記者編集者協会により刊行された。

 サリー・ジェイムスによる記事「The craft (and art) of the interview, from thoughtful homework to whatever happens(インタビューの技術と技法~考え抜かれた準備から不測の事態への対応まで)」は、2018年にニーマン・ストーリーボードに掲載された。副題には、「Four field reporters share their best tips for effective interviews(4分野の記者たちが明かす、効果的なインタビューに向けた最高のヒント)」とある。

 「No surprises: Transparency and the art of the investigative interview(予測可能性:透明性と調査報道インタビューの技法)」は、サンフランシスコ・クロニクルの調査報道記者カレン・デ・サとプロパブリカの上席記者T・クリスチャン・ミラーが作成したヒント集。2018年の米調査報道記者編集者協会の大会で紹介された。

 英調査報道センター(Centre for Investigative Journalism)によるハンドブック「Interviewing Techniques(インタビューの手法)」には、「敵対的インタビュー」のセクションが設けられている。

Asking the Hard Questions About Asking the Hard Questions(真剣に考える『厳しい質問』)」は、「コロンビア・ジャーナリズム・レビュー」に掲載されたアン・フリードマンによる記事の副題である。

 IJネットのダナ・リーベルソンによる「5 interview tips every journalist needs(全ジャーナリストのためのインタビュー5つのヒント)」には、電子メールによるインタビューに関するセクションが設けられている。

 ナイト・センター(Knight Center)による記事(訳注:リンク切れ)には、多くのリンクとともに、さまざまなソースから得られたアドバイスがまとめられている。​

 BBCアカデミー(訳注:リンク切れ)には、BBCのさまざまなジャーナリストによる放送インタビューに関する資料が集められている。

 「30 Tips on How to Interview Like a Journalist(ジャーナリストのようにインタビューする30のヒント)」は、には、ジャーナリスト、プロデューサーであるデビッド・スパークが提供するアイデアが満載されている。

 バルカン調査報道ネットワーク(Balkan Investigative Reporting Network)の地域ディレクターであるゴルダナ・イグリッチが執筆した記事(訳注:リンク切れ)では、インタビューが調査報道ジャーナリズムの重要なスキルの一つとして取り上げられている。

 「How Journalists Can Become Better Interviewers(ジャーナリストがインタビュー能力を磨く方法)」は、チップ・スキャンランが米ポインター研究所(Poynter Institute)のために執筆した記事で、「賢く立ち回る」「質問を考案する」「耳を傾ける」「強調する」「周囲を見渡す」「相手の話し方を見抜く」「原則を定める」「実験台になる」といった主題が詳細に論じられている。

 「Essential Tips for Interviewing Children(子どもへのインタビューのための重要なヒント)」の中で、ワシントンポストのジョン・ウッドロー・コックス記者は次のようにアドバイスしている。「まず人間であれ。できるだけ事前準備をせよ。その子どもがどんな疑問をもっているかを把握しておく。可能であれば没頭せよ。子どもたちをリラックスさせる。居心地のいい場所に置く。子どもたちの言葉は検証する。子どもたちを甘く見ない」

 米ナショナル・パブリック・ラジオの有名なインタビュアーであるテリー・グロスは、2018年に彼女のインタビュー手法についてインタビューを受けている。

被害者へのインタビュー

 被害者へのインタビューには特別な配慮が必要だ。GIJNの人身売買に関する資料ページには、この点に関するアドバイスが収録されている。人身売買に関する報道で賞を受けたジャーナリストであるAP通信のマーサ・メンドーサ記者、マリア・ポリツァー記者によるアドバイスも含まれている。

 「Advice for Reporters Working with Survivors of Child Abuse(児童虐待の生存者を取材する記者へのアドバイス)」は、2019年にハンブルクで開催されたGIJNカンファレンスでのパネルディスカッションをまとめた記事の冒頭に置かれている。主なポイントは以下の3つだ。

  • 生存者と信頼関係を構築する。 
  • 情報提供者の安全に配慮する。
  • 相互支援のための生存者コミュニティを活用する

 ジョー・ヒーリーによる2019年の著作『Trauma Reporting: A Journalist’s Guide to Covering Sensitive Stories(トラウマの報道:センシティブな事例を取材するジャーナリストのためのガイド)』について、この記事で著者自身が紹介している。

 NGOのプロジェクト・リーチによるガイドには「記憶の変化が必ずしも誤りや嘘を意味するものではなく、トラウマによる反応の証拠かもしれないことに留意しよう」といった警告が含まれている。

 「Suggestions geared for journalists(ジャーナリストのための提言)」は、カリフォルニアで活動する人身売買問題に対するコンサルタント、ミン・ダンが作成したもので、五つの基本理念を挙げている。児童人身売買から救出されたホリー・スミスは、親密な関係と信頼の構築の重要性について書いている。

 国連薬物・犯罪局(UNODC)が発行する「The Toolkit to Combat Trafficking in Persons(人身売買と戦うために)」には、女性・子どもへのインタビューに特化したアドバイスが収録されている。また、インタビューなどの主題について参考になるのが、同じくUNODCによる「Anti-Human Trafficking Manual for Criminal Justice Practitioners(刑事司法実務家のための人身売買対策マニュアル)」である。世界保健機関(WHO)は、「Ethical and Safe Interviewing Conduct(倫理的で安全なインタビュー実践)」を寄稿している。

 「10 rules for reporting on war trauma survivors(戦争トラウマ被害者の報道に関する10のルール)」は、9.11後の時期における戦争・トラウマ・復員兵問題の報道に注力する非営利報道機関「ザ・ウォーハウス」がまとめたものである。

関連分野からのヒント

法廷会計士によるもの

 「Investigative Interviewing Techniques(調査インタビューの手法)」はあらゆる種類のインタビューを対象としているが、ジャーナリストにとっての教訓も含まれている。財務アドバイスと投資銀行サービスを提供する米国企業ダフ&フェルプスのクリストファー・ヘイニーとアンドレア・ローラーが執筆したもの。

公認不正検査士によるもの

 詐欺にフォーカスしている「i-Sightソフトウェア」のマネージング・エディターであるドーン・ローマーによるチェックリスト

法執行関係者によるもの

 「Investigative Interviewing Techniques(調査インタビューの手法)」はあらゆる種類のインタビューを対象としているが、ジャーナリストにとっての教訓も含まれている。財務アドバイスと投資銀行サービスを提供する米国企業ダフ&フェルプスのクリストファー・ヘイニーとアンドレア・ローラーが執筆したもの。

 「Interviewing the FBI Way(FBI式尋問術)」(訳注:リンク切れ)は、元FBI特別捜査官ジョゼフ・スチュアートに取材した記事である。

ビジネススクール教授によるもの

 「Interviewing white-collar criminals(ホワイトカラー犯罪者の尋問)」では、ハーバード・ビジネススクール教授のユージーン・ソルテスが6つのヒントを挙げている。

最後に、再びジャーナリストによるもの

 愉快な表題の「How to Interview Like a Journalist (No Matter What Your Job Is)(誰でもできるジャーナリスト式インタビュー)」(訳注:リンク切れ)は、「クルー」の編集者ジョリー・マッケイによる優れたまとめである。


原文はこちら:Perspectives on Interviewing Techniques
この翻訳はGoogle News InitiativeとGoogle Asia Pacificの支援を受けて行われました。
This translation is supported by the Google News Initiative and Google Asia Pacific.
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